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退職勧奨を「パワハラ」と言われないようにするための注意点【会社向け】

2021-09-18

退職勧奨は、やり方によっては「パワハラ」と訴えられる可能性があります。そこで、今回は、退職勧奨が「パワハラ」と言われないようにするための注意点についてご説明します。

1 パワハラとは

まず、「パワハラ」とは何であるかを押さえる必要があります。

パワハラとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものをいいます。具体的には、「身体的な攻撃(暴行・障害)」、「精神的な攻撃(脅迫・暴言等)」、「人間関係からの引き離し(隔離・無視)」などをいいます。

このため、退職勧奨の話を切り出したとしても、それだけで「パワハラ」となるわけではありません。

2 退職勧奨で問題となる場合

もっとも、やり方によっては、退職勧奨が「パワハラ」となってしまう危険があります。パワハラと評価されうる退職勧奨としては、次のものが考えられます。

① 退職勧奨に応じるまで部屋から出さない。

② 長時間にわたって執拗に退職勧奨を繰り返す。

③ 退職勧奨の際、「あなたのような給料泥棒は、会社を辞めてもらうしかありません。」、「あなたが会社にいることは、会社にとって損失でしかありません。」など、精神的な攻撃を繰り返す。

④ 退職勧奨に応じない部下・従業員を他の従業員から隔離する。仕事を与えない。

極端な例と思うかもしれませんが、実際の現場では、つい熱が入ってしまい、やり過ぎてしまう危険があります。ご注意ください。

このような対応の結果、部下・従業員が退職したとしても、後日、「会社側の違法な言動で退職を余儀なくされた。」として訴えられてしまう可能性があります。この場合、「職場復帰」が認められるのみならず、「退職してから職場復帰するまでの賃金」、「慰謝料」の支払義務が発生してしまいます。さらに、違法な退職勧奨によって精神疾患に罹患したとして、さらなる損害賠償が請求される危険があります。 

3 まとめ

退職勧奨がパワハラとなりうる場合をご説明しました。

退職勧奨を行う場合には、対象者(部下・従業員)を傷つけるような言葉(攻撃的な言葉)を発しても、対象者は態度を硬化させるだけです。

退職は、部下・従業員が自ら決断することです。「この会社での仕事は、自分に合っているのだろうか。」、「このまま会社に残ることは、自分のキャリアにとってプラスになるだろうか。」、「今の職場の人間関係に耐えられるだろうか。」など、退職を考える人は、「自分」を起点に物事を考えます。

このため、対象者の心に響く説得を行いたいのであれば、会社側の都合を述べるのではなく、まずは対象者の立場・気持ちになって説得の言葉を考えることが必要です。また、会社と対象者がミスマッチと判断したのであれば、そのような判断を裏付ける資料(客観的資料。これまでの問題行動に関する業務指導書など)を示しながら、対象者に説明することが必要です。

このような姿勢で臨むことが、退職勧奨を「パワハラ」と言わせないための一番のポイントです。

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2021-09-16

「問題社員に辞めて欲しい」、「解雇しようと思っている」など、部下・従業員の解雇・退職問題にお困りの会社は多いと思います。そこで、今回は、「退職勧奨」についてご説明します。

1 退職勧奨とは

退職勧奨は、解雇ではありません。従業員の自発的な退職を促す行為です。従業員に「自発的に辞めてもらう」ことがポイントです。そこで、「自発的に辞めてもらう」ため、どのような働きかけを行うかが重要です。

2 問題がある退職勧奨の方法

退職勧奨で問題となる例としては、次のようなものがあります。

① 解雇事由がないにもかかわらず、「辞めないと解雇する」と言う。

② 連日、長時間にわたって執拗に退職を求める。

これらは、いずれも「従業員の自発的な退職を促す行為」とはいえません。「退職の強要」であり、裁判所で争われた場合、違法と判断される可能性が非常に高いといえます。

なお、違法と判断されると、「従業員の復職(職場復帰)」が認められるのみならず、会社は従業員に対する「復帰するまでの間の賃金」や「慰謝料」の支払義務が発生します。

3 退職勧奨する場合

「退職勧奨」といっても、部下・従業員に解雇事由があるか否かによって、対応方法が異なります。

① 解雇事由がある場合

この場合の退職勧奨は、部下・従業員のキャリアや退職金の支給等を考えて、自主退職を勧めるものです。

解雇事由が存在する以上、まずは退職勧奨を行い、本人がそれに応じなければ解雇権を行使することになります。

もっとも、「解雇事由があるか」について、会社と従業員との間で争いになることがあります。この点は、退職勧奨を行う前に、従業員の問題行動に関する証拠資料を集め、弁護士や社会保険労務士などの専門家と十分に協議してください。

証拠資料(書面など)がないにもかかわらず、「解雇事由がある」と主張しても、そのような主張が裁判所に認められる可能性は低いといわざるを得ません。この場合、「解雇事由があること」を前提に退職勧奨したとしても、後日、裁判所で争われた場合には、「解雇事由がある」という前提自体が崩れる危険があるので、ご注意ください。

② 解雇事由が存在しない場合

会社は、部下・従業員が退職勧奨に応じない場合には、解雇権を行使することはできません。

この場合には、会社が求める能力と本人の能力との間にミスマッチがあることについて、エピソードを交えながら説明する、退職勧奨に応じてもらうための条件提示(退職金の上乗せ等)を検討する等が重要です。「エピソードを交えながら説明する」というのは、例えば、メールや業務指導書などの資料を示しながら、具体的に説明することです。

「絶対に退職させよう」として、退職勧奨を執拗に繰り返すと、違法な退職勧奨と主張される危険があります。この場合には、いったん退職勧奨をやめて、部下・従業員の対応が改まったかを見守る必要があります。

4 まとめ

部下・従業員の退職勧奨を行う際の注意点を述べました。実際に退職勧奨を進めるには、会社の実情や対象となる部下・従業員の問題点など、それぞれの事案ごとで検討すべき事情が異なります。また、退職勧奨の話を持ち出すと、部下・従業員との信頼関係にもヒビが入ります。

退職勧奨は、「最後の手段」です。問題行動がある社員には、安易に退職勧奨を行うのではなく、それ以前に、根気強く注意・指導を繰り返す必要があります。このような対応は、後日、退職勧奨(あるいは、解雇)の効力が争われた場合、会社側に有利な事情として考慮されます。

これらを念頭に置いて、実際に退職勧奨を進める際には、慎重にご対応ください。

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