Archive for the ‘ブログ(業務にお役立てください。)’ Category
Q&A 従業員が退職しているにもかかわらず、団体交渉に応じないといけないでしょうか?
Q.退職したはずの従業員が加入したとのことで、合同労組から団体交渉申入書が送られてきました。その従業員は,すでに当社を退職しているので、団体交渉に応じる必要はないのではないでしょうか?
A.団体交渉として、解雇・退職の無効を争う場合、あるいは、在職時における未払賃金(残業代)の請求等に関する場合には、団体交渉に応じる必要があります。
Q&A 団体交渉の代わりに、書類のやりとりで済ませられないでしょうか?
Q.会ったことのない人たちと直接会って交渉するのではなく、書類のやりとりだけで済ませたいと思います。書類のやりとりも「交渉」なので、団体交渉に応じていることになりませんか?
A.組合側が対面による交渉を要求している場合には、これに応じる必要があります。これを拒絶することは、「団体交渉拒否」に該当すると考えられます。
Q&A 団体交渉ではなく、従業員との直接交渉で解決できないでしょうか?
Q.聞いたことのない労働組合と団体交渉するよりも、従業員個人と話し合って解決した方がよいのではないでしょうか?
A.団体交渉の申入れがあるにもかかわらず、従業員個人と直接話し合おうとすることは、不当労働行為である「団体交渉拒否」や「支配介入」に該当します。このため会社は、労働組合と団体交渉する必要があります。
Q&A 団体交渉申入書が届きましたが、応じないといけないでしょうか?
Q.従業員が労働組合(合同労組)に加入したとのことで、その組合から団体交渉申入書が送られてきました。当社に労働組合はなく、団体交渉を申し込まれた労働組合のことは全く知りません。このような労働組合からの団体交渉に応じないといけないのでしょうか?
A.合同労組であっても、労働組合法上の「労働組合」に該当する以上、団体交渉に応じる必要があります(これを拒絶すると、「団体交渉拒否」として不当労働行為となります。)。
従業員が合同労組に加入すると、その組合から会社に対し、「組合加入通知書」と「団体交渉申入書」が送付されます(組合員が会社に書面を持ってくる場合もあります。また、これらが1通の書面で届くこともあります。)。
会社は、全く知らない労働組合(合同労組)から、このような書面が届くことで、まずは驚いてしまいます。しかも、団体交渉申入書には、①労使トラブルに関する先方(従業員側)の事実認識・見解、②組合(従業員)側の要求が記載されていますが、①の記載は会社の認識とは異なる場合が多く、②の要求も一方的な内容が多いといえます。
会社としては、全く知らない労働組合から、突然、このような一方的な書面を送りつけられたことで、そもそも団体交渉に応じる必要があるのか?と疑問に思うかもしれません。しかし、合同労組が労働組合法上の「労働組合」に該当する以上、団体交渉に応じる必要があります(これを拒絶すると、「団体交渉拒否」として不当労働行為となります。)。
そこで、合同労組から団体交渉申入書が届いた場合には、団体交渉を拒絶するのではなく、先方が主張する事実経過・見解に対する会社側の事実認識・見解を整理し、組合の要求に対する会社側の回答(応じるか応じないか、対案を出すか出さないか。)を準備する等、団体交渉に向けた準備を進める必要があります。
労働組合(合同労組)から団体交渉の申入れがあった場合
問題行動を繰り返す社員(A社員)に注意指導を繰り返していたところ、ある日、Bユニオン(合同労組)から、A社員がユニオンに加入したこと、上司CがA社員にパワハラを繰り返しているため、これを是正するために団体交渉を要求してきた・・・。
このような場合、会社としては、どのように対応すればよいでしょうか。
合同労組とは
合同労組とは、労働組合の一種です。具体的には、一定地域の労働者が、所属する会社に関係なく加入することができる労働組合です。「所属する会社に関係なく」加入できるため、労使問題を抱える労働者が駆け込み加入し、それをきっかけに合同労組が会社に対し、団体交渉を要求することになります。
労働組合は、憲法28条や労働組合法に基づく組織であり、その結成や活動について、法的保護が与えられています。そして、合同労組も労働組合の一種であるため、これらの法的保護が及ぶことになります。
したがって、「知らない組合だから団体交渉など応じる必要がない。無視する。」という対応は間違いということになります。
憲法28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
労働組合法1条1項
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
労働組合の結成や活動については、法律(労働組合法)上、法的保護が与えられています。このため使用者(会社)は、労働組合の結成や活動を制約する行為が禁止されています(団体交渉の拒否など。これら禁止されている行為を「不当労働行為」といいます。労働組合法7条)。
① 不利益取扱い
② 団体交渉の拒否
③ 支配介入
団体交渉の拒否
労働組合法(7条2号)は、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」と規定しています。このため、「正当な理由」があれば団体交渉を拒否できることになりますが、実際のケースでは、「正当な理由」が認められる場合は非常に少ないといえます。したがって、団体交渉の申入れがあれば、これに応じ、交渉の席に着くのが通常です。
先ほどの、「知らない組合だから団体交渉など応じる必要がない。無視する。」という対応は、「団体交渉の拒否」に該当することになります。
団体交渉の拒否には2種類あります。「団体交渉を拒否すること」(団交拒否)と「誠実な交渉を行わないこと」(不誠実団交)です。
団交拒否
「団交拒否」とは、文字通り、団体交渉を拒否することです。
例えば、従業員ではない労働者(退職した従業員など)が加入した合同労組からの団体交渉の申入れに応じなければならないかが問題となる場合があります。
これについては、労働組合が団体交渉を要求する事項(「団交事項」といいます)に記載された内容に応じて団体交渉に応じなければならないか否かが決まります。すなわち、退職従業員からの団交申入れであっても、解雇無効等が団交事項の場合には、その団交事項との関係では「使用者」といえるため、団体交渉に応じる必要があります。
不誠実団交
「不誠実団交」とは、団体交渉には応じるものの、「話を聞くだけ」、「言い分を述べるだけで根拠資料を示さない場合」などを言います。形式的には団体交渉に応じているものの、実質的な話し合いに応じようとしない姿勢に終始することです。
それでは、組合側の要求に応じないことは、「不誠実団交」となるでしょうか?
労働組合法は、「団体交渉することを正当な理由なく拒むこと」を禁止するのみで、「組合の要求に応じなければならない」と規定しているわけではありません。
したがって、組合の要求を検討した結果、要求に応じることができない、あるいは、一部しか要求に応じられないとしても、だからといって、それが不誠実団交となるわけではありません。この場合は、会社側の言い分(提案)を理解してもらうよう、説明を尽くしていくことになります。
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労働組合から団体交渉を申し込まれたら?
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労働審判期日(第1回期日)の実際【会社向け】
今回は、実際の労働審判期日について、ご説明します。
参加者
裁判所:労働審判官1名(裁判官)、労働審判員2名(使用者側・労働者側)
申立人:申立人(本人)、申立人代理人(弁護士)
相手方:会社担当者(社長・人事担当者など)、関係者(上司、同僚など)、相手方代理人(弁護士)
会社の立場で言いますと、「関係者(上司、同僚など」の参加は必須です。
関係者が参加しないと、客観的証拠がない限り、事実関係に関する会社側の主張を裁判所に認めてもらうことはできません。実務を経験すると、「客観的証拠」と言っても、「誰が見ても会社の言い分が証明される明白な証拠」というものはほとんどなく、提出した証拠(書類、メールなど)について、作成目的・作成経緯・作成前後の状況など、裁判所からの確認があると考えてください。
また、労働事件は、労使間のトラブルが数か月(場合によっては数年単位)で続いてきたケースが大半です。そして、長期にわたる事実経過の中で、「客観的証拠」(書類・メールなど)が全て揃っているケースは稀です。このため、関係者による事実関係の説明が不可欠です。
さらに、労働審判期日には、申立人(労働者)が参加して、自らの言い分を裁判所へ直接説明します。しかし、その説明の中には、会社からみると「事実とは認め難い」内容もあります。そのような場合に、キチンと反論するためには、その件に直接関与していた人物(=上司・同僚などの関係者)が労働審判期日に出席し、会社側の言い分をしっかりと裁判所へ伝える必要があります。
事実関係の確認
裁判所は、あらかじめ「労働審判申立書」と「答弁書」をよく読んだうえで期日に臨んでいます。このため、裁判所からは、双方が主張する事実関係について、申立人・相手方双方に対し、かなり突っ込んだ質問があります。
例えば、以下のような質問です。
「ここに○○と書いてありますが、具体的にはどのようなことがあったのですか?」
「甲○号証(証拠)には、『△△』と書いてありますが、これはどういう意味ですか?」
「(証拠を示しながら)どうしてこのような書類を作成したのですか?」
「(関係者に対し)先ほど、申立人が『××』と言っていましたが、そのような事実はありましたか?」
など、「答弁書に書いていないこと」や「答弁書では、はっきりしないこと」を中心に質問されると考えてください。また、提出した証拠の内容についても質問されると考えておいてください。
以上の質問は、関係者本人でないと回答できません(人事担当者は「当事者からの伝聞」が多く、しかも、細かい点まで把握できていないことから、しっかると回答できない可能性があります。)。
さらに、裁判所は、関係した当事者本人に質問し、その回答を求める傾向が強いといえます。
当事者本人であっても回答に窮する場合があり、たまに代理人が助け舟を出すこともありますが、基本的には関係者本人が回答しなければなりません。
したがって、期日当日は、関係者(上司、同僚など)の出席が不可欠です。
そして、ここでキチンと説明・回答できるか否かが結論に大きな影響を与えます。
なお、このような事実関係の質問は、申立人と相手方の双方に行われます。
事案にもよりますが、争点が多岐にわたる場合(懲戒解雇の事案で、労働者の問題行動が多い場合など)は、それぞれ1時間前後(場合によっては、それ以上)の時間がかかると思ってください。
和解に向けた協議
双方からの事実関係の聴取が終わると、和解に向けた協議が行われます。
労働審判は、調停による解決(和解)を前提とした手続であるため、このような協議の席が設けられます。
事実関係の確認は、当事者(申立人・相手方)が同席した状態で行われますが、和解に向けた協議は、申立人と相手方が別々に裁判所と話します。
和解に向けた協議の席では、裁判所から和解解決に向けた考えについて質問されます。
このため、労働審判期日に先立ち、和解する場合の条件(解決金の金額など)について、社内や弁護士との間で協議しておく必要があります。
このとき、裁判所から事案に関する裁判所の考え(心証)が開示され、裁判所が妥当と考える和解案が提示されることになります(申立人の希望が伝えられることもあります。)。これに対し、会社側として、「譲歩できるところ・できないところ」を明らかにして、譲歩できるところは「どこまで譲歩できるか」を裁判所に示します。
このような裁判所とのやりとりを申立人・相手方がそれぞれ行い、和解解決による解決の可能性を探ることとなります。
なお、労働審判の場合、第1回期日で和解できるケースも多いため(裁判所もそのようなスタンスで当事者に対応します。)、可能であれば決裁者の同席が望ましいと言えます(同席が困難である場合には、決裁者と連絡がとれる状態にしておく必要があります。)
その場で即答できない場合は、第2回期日を入れることになります(なお、第2回期日以降は、和解に向けた協議が中心です。)。
最後に
労働審判期日の実際は、以上のとおりです。
「裁判」というと、弁護士が活躍するイメージがありますが、労働審判期日の主役は当事者(申立人本人・上司や同僚などの関係者)です。
「答弁書に書いてもらったから大丈夫」と考えてはいけません。
しっかりと準備して、期日当日に臨んでください。
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労働審判で会社が準備すべきこと【会社向け】
労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終結することになっています。もっとも、ほとんどのケースでは、第1回期日の段階で、裁判所が具体的和解案を提示します。このため、労働審判は「第1回期日が勝負」です。したがって、従業員から労働審判を申し立てられた場合、会社は、直ちに対応準備に取り掛からないといけません。
今回は、労働審判を申し立てられた場合の会社の初動対応について、ご説明します。
事実関係の整理(時系列にまとめる。)
労働審判を申し立てられた場合、会社だけで対応することは事実上不可能です。弁護士に依頼して、会社の言い分を裁判所にきちんと伝える必要があります。そして、そのためには、まずは弁護士に、事実関係を正確に伝えなければなりません。
これまでの経験上、弁護士に事実関係を正確に伝えるためには、次の点に注意していただくのがよいと思います。
まずは、労働審判申立書を読んでください。そして、従業員が何を要求しているかを確認してください。また、労働審判申立書には、申立てに至る事実経緯が記載されています。これに対し、会社側の言い分を時系列に沿って作成してください(簡単なもので構いません。)。
事件の類型によって、重要となる証拠・ポイントは、次のとおりです。
① 退職が争われるケース(不当解雇)
退職時に本人が提出した書面があるかを確認するとともに(退職届など)、関係者(上司、同僚など)から退職に至る経緯を聴取してください。なお、退職に至る過程でメールのやりとりをしている場合も多いので、メールも確認してください。
② パワハラが争われるケース
通常であれば、労働審判を申し立てられる前に、従業員(申立人)からパワハラ被害に関する申告があったはずです。そのときの調査結果を確認するとともに、労働審判申立書に記載された内容を踏まえ、再度、関係者に聴取してください。
③ 残業代請求の場合
労働時間に関する資料(勤怠記録など)を確認するとともに、給与計算の内容について社会保険労務士(社労士)に確認してください(給与計算を社労士に依頼している場合)。
なお、早い時点で弁護士に委任することができた場合には、関係者への聴取の際、弁護士にも同席してもらいましょう。そうすることで、準備と時間が節約できます。
速やかに弁護士へ相談・依頼すること
労働審判申立書に対する反論書の提出期限は、日程がタイトです。そこで、上記の調査と並行して、弁護士に相談し、速やかに依頼してください。
労働審判は裁判に準じた手続であり、専門的な知識・経験がないと対応できません。「自社で何とかなるだろう。」と考えてはいけません。
依頼する弁護士が見つかった場合には、早急に弁護士と打合せを行ってください。このとき、事実関係を時系列に沿って整理していると、弁護士もスピーディーに事案を理解することができます。また、労働審判では、会社側の証人として関係者(上司や同僚など)が同行し、裁判所に事実関係を説明する必要があります。会社側証人を決めるためにも、弁護士との打合せはただちに実施する必要があります。
最後に
労働審判を申し立てられた場合の初動対応についてご説明しました。この手続は、「第1回期日が勝負」です(第1回期日で裁判所から和解案が提示されるケースが大半です。)。そこで、裁判所から労働審判申立書が届いたら、速やかに対応することが重要です。
加藤労務法律事務所は、これまで会社側代理人として多数の労働審判事件を取り扱っており(解雇事件・内定取消事件など)、ポイントを押さえた準備・書面作成・期日対応を行います。労働審判を申し立てられた企業様は、加藤労務法律事務所へご相談ください。
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退職勧奨の面談準備(想定問答)【会社向け】
問題社員の退職勧奨を行う際、「何を聞かれるか」、「どのように答えるか」、「どのように言えばいいのか」など、面談前に想定問答集を準備しておくことは非常に大切です。
当日のやりとりを全て事前に準備しておくことは不可能ですが、ある程度のところを準備しておくことは可能です。今回は、退職勧奨を行うにあたり、面談前に準備しておくべきポイントや退職勧奨の切り出し方について、説明します。
退職勧奨の事前準備でお困りの企業様は、加藤労務法律事務所までご相談ください(法律相談料は、1時間あたり33,000円(消費税を含む)です。)。
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1 想定問答集の準備
部下・従業員に対する退職勧奨を行うことは、ご担当者様(上司や人事担当者など)にとってもストレスの大きい業務です。あらかじめ想定問答集を作成して協議に臨むことができれば、ご担当者様の精神的負担を軽減させることができます。
退職勧奨の場合には、以下の点が話題になることが多いといえます。そこで、これらの点について、想定問答を準備しておくとよいでしょう。
① どのような会話から始めるのか。
② どのように退職の話を切りだすのか。
③ 本人から「クビですか?」と言われた場合の回答
④ 「辞めたくない」と言われた場合の回答
⑤ 退職金、有給消化、雇用保険、健康保険に関する回答
これらの点について、想定問答を一言一句準備することはできません。「こんな感じのことを聞かれたら、こう答えよう」程度の準備で十分です。
また、対象者から、想定外の質問や回答が出てくることも予想されます。もし、そのような質問や回答が出た場合で、その場で対応できないものについては、「宿題」として持ち帰り、いったん交渉を終えることも重要です。想定外の質問に対し、回答をはぐらかしたり、無理に押し切ろうとしたりすると、対象者は不信感を抱き、トラブルに発展する危険があります。
2 退職勧奨の切り出し方
会社が退職勧奨を行うのは、その従業員が問題行動を行ったことが理由と考えられます(しかも、会社が退職勧奨を行うくらいですから、問題行動を繰り返していると思われます。)。
そこで、「本人の問題行動→会社による注意指導→問題行動が改善しなかったこと」を具体的に説明できるよう準備してください。そして、問題行動に関する対象者の自覚や反省、今後、同種行為に及ばないよう、どのような点に注意するかを聴取してください。その際は、問題行動に関する対象者の考えをしっかりと聞くことがポイントです。
対象者の考えを聞いたものの、「今後、気を付けます」といった程度の回答しか返ってこない場合もあります。
しかし、問題行動を起こしている以上、このような回答では不十分です。「今後、どのような点に気を付けるのか」、「そのために、今からどのような対応・対策をとるのか」等、具体的な再発予防に向けた考えを聞いてください。
再発予防策について具体的な回答を求めることは、他の社員に対する安全配慮義務や企業秩序維持(円滑な業務遂行)のためにも必要です(例えば、パワハラのケースなど)。
上記の質問に対し、本人が話をそらそうとする、本人から十分な回答を得ることができない場合には、本人は自らの問題行動を自覚していないと思われます。会社が退職勧奨を検討するケースは、多くの場合、対象者が過去にも同種行為を行っていると考えられるため、再び問題行動を起こす可能性は非常に高いと考えられます。
しかし、仮に、問題行動を繰り返した場合、職場内の人間関係がギクシャクする等、対象者にとっても働きにくい状況になることが予想される。そうであれば、ここで退職することも選択肢の一つではないかと提案するのが自然な流れといえます。
また、本人が「問題行動を起こしたことを他の従業員のせいにすること」も想定されます。
このような場合には、複数の従業員(上司)が本人に対応したものの、いずれも同じ結論(人間関係のトラブル等の問題が発生したこと)になっている事実、他の従業員はそのようなトラブルが起こっていないことを淡々と説明することが考えられます。
これらの説明を通じて、その会社で働き続けることは、今後も職場内での人間関係のトラブルが生じる可能性があることが浮かび上がります。そして、そのような状況で働き続けることは対象者にとっても本意ではないと思われ、そうであれば、会社を退職し、別の会社で働くことも選択肢の一つではないかと提案することになると考えられます。
退職勧奨の事前準備でお困りの企業様は、加藤労務法律事務所までご相談ください(法律相談料は、1時間あたり33,000円(消費税を含む)です。)。
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労災による賠償請求があったときに検討すべきこと(被災者側の減額事由)【会社向け】
過重労働が原因で脳出血や心筋梗塞などの疾病が発症したとします。この場合、会社は被災者に対し、安全配慮義務違反による損害賠償義務を負うこととなります。しかし、被災者が高血圧であった、あるいは、飲酒・喫煙習慣があった等、疾病の原因となる基礎疾患や生活習慣を有していた場合、これらの点は、どのように取り扱うことになるでしょうか。今回は、被災者側の減額事由について、ご説明します。
1 被災者側の減額事由
被災者が過重労働等の業務に起因して脳出血や心筋梗塞などの疾病を発症した。他方で、その被災者には、高血圧の治療歴や飲酒・喫煙の生活習慣があった。
この場合、被災者が疾病を発症したのは、過重労働(会社の安全配慮義務違反)と既往症・生活習慣(被災者側の事情)が競合した結果と考えることができます。仮に、被災者側にこれらの事情がある場合には、疾病を原因とする被災者の損害について、その全てを会社に負担させることは当事者間の公平に欠ける結果となりかねません。つまり、被災者側に基礎疾患や生活習慣がなければ、ここまで損害が大きくならなかったといえる場合には、損害の全部について、会社に賠償責任を負わせるのが正しいか、ということです。
労災による損害賠償が争われる場合には、このような観点から、会社の被災者に対する損害賠償責任について、一定割合の減額がされる場合があります。
例えば、長時間労働によって疾病が発症したケースにおいて、被災者の生活習慣(飲酒・喫煙習慣)、持病の治療を受けていなかった点を踏まえ、会社側が負担すべき損害額が減額された事案も存在します。
2 実務上の注意点
以上が原則です。
ところが、実務では、被災者側の事情を「立証」(証明)しなければならないというハードルが存在します。つまり、抽象的に、「飲酒習慣があった。」、「喫煙習慣があった。」、「高血圧であった。」等と言うだけでは、裁判所は取り上げてくれません。
したがって、これらの事情をいかにして立証するかが重要となりますが,実は,この立証問題が難しいのです。
過去に取り扱ったケースでは、被災者本人のカルテを取り付けたところ、本人自筆の問診票に基礎疾患に関する記載(高血圧の治療歴)や生活習慣に関する記載(ヘビースモーカーであったこと)があったため、これらを証拠提出したところ、減額事由となる被害者側の事情が認定され、一定割合の減額が認められたことがあります。
3 まとめ
先般、高年齢者雇用安定法が改正されたことに伴い、今後、高齢労働者が就労する機会は、さらに増えていくでしょう。年齢を重ねるほど、高血圧などの基礎疾患を抱える人は増え、脳出血などの発症リスクは高まると考えられます。そして、脳出血等の疾病が発症した場合、労災であると主張されるリスクは高いと予想します。
このような主張を防止するためには、まずは長時間労働を抑制することが重要です。さらに、賠償額の適正化という観点から、労働者の健康管理の重要性は、ますます高くなると考えます。
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労災事故が発生し、被災者(従業員)が労災認定された。その場合、会社は、被災者から安全配慮義務に違反したとして、損害賠償請求を受けることがあります。今回は、そのような請求を受けた場合に、まずは会社が行うべきことについて、ご説明します。
1 労災事故を理由とする損害賠償請求
労災事故が発生し、被災者が労災認定された。その場合、会社は、被災者から、労災保険給付では補償されなかった損害について、賠償請求されてしまうでしょう。しかも、その請求額が数千万円単位となってしまうことは、実は多数あります。
それでは、被災者から数千万円もの賠償請求を受けた場合、どのように対応すればよいでしょうか。
2 まずは、弁護士に相談すること
被災者(実際は、その代理人弁護士)から損害賠償請求の書類が届いたら、まずは弁護士に相談してください。その際、労基署に提出した労働者死傷病報告や労災申請の関係で提出した書類の控えがあれば、それを持参してください。また、社内で労災事故を調査していれば、それらの資料も持参してください。
これらの資料があれば、相談を受けた弁護士は、事故状況、被災者の怪我の程度など、事案の概要を把握できます。
3 事故状況の把握
事故状況は、被災者にも過失があったといえるかを検討する材料となります。例えば、被災者が構内ルールを守っていなかった結果、事故に遭ったのであれば、被災者の過失を問える可能性があります。そして、被災者に過失を問うことができるのであれば、過失相殺の主張(被災者の過失分は自己負担すべきとの主張)が可能となります。
仮に、過失相殺の主張ができるのであれば、これにより、賠償額の圧縮を図ることが可能です。
4 怪我の程度の確認
被災者の怪我の程度(特に、事故当初の怪我)の程度を確認することも重要です。例えば、軽傷事案(打撲など)であるにもかかわらず、休業期間が長期化していた場合、休業期間が長期化した原因は、労災事故による怪我だけでなく、別の要因と相まって長期化したのではないかと考えることができます。
後遺障害が残存した場合には、当初の怪我と認定された後遺障害との間に整合性があるかも重要なポイントです。労災事故による怪我と既往症(事故前からの持病など)が相まって後遺障害が残った場合には、後遺障害に関する損害(逸失利益、後遺障害慰謝料)について、一定割合の減額主張が可能となる場合もあります。
5 まとめ
今回は、会社が被災者から損害賠償請求を受けた場合に、まずは行うべきことをご説明しました。 数千万円単位の賠償請求書を受け取ると、驚きのあまり、何をすればよいか分からず、途方に暮れるかもしれません。でも、皆さんの会社の味方となってくれる人は必ずいますので、今回のブログを参考に、冷静に行動してください。
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