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違法な退職勧奨と言われないようにするための注意点【会社向け】
退職勧奨を行うにあたり、対象者(部下・従業員)から「違法な退職勧奨」と主張されることがあります。そこで、今回は、どのような退職勧奨が違法と考えられるかをご説明します。
1 解雇事由がないのに、解雇すると言うこと
解雇事由がないことを認識しながら、退職勧奨に応じなければ解雇すると言うことは、部下・従業員をだまして退職させようとするものであり、違法と考えられます。
仮に、このような退職勧奨の結果、部下・従業員が退職した場合には、後日、退職の意思表示が錯誤であった、会社の虚偽説明によって退職の意思表示に及んだとの理由で、退職は無効であると主張される可能性が高いといえます。
解雇事由がないにもかかわらず、不用意に解雇する等の発言は行わないようにしてください。
2 人格否定・名誉棄損的発言や恫喝的な対応
「あなたみたいなダメ人間はいりません。早く辞めてください。」、「レベルが低すぎるので、退職したらどうですか。」など、部下・従業員の人格を否定するような発言は行ったらダメです。また、大声で怒鳴ったり、机を叩きながら退職するよう求めるなど、退職勧奨の際、恫喝するような対応に及ぶこともダメです。
これらの行為は、もはや説得行為とはいえません。このようなやり方での退職勧奨も違法と判断されると考えます。なお、このような行為に及んだ場合には、後日、部下・従業員から、退職勧奨の際に精神的苦痛を受けたとして慰謝料請求を受ける可能性も高くなります。
3 長時間にわたる退職勧奨
長時間の退職勧奨も、後日、「長時間にわたって退職を執拗に求められた」と主張される可能性があります。違法と判断されるか否かは、時間や頻度にもよりますが、このような主張を受けないようにするには、1回あたりの面談時間は1時間(長くても2時間程度)とすべきです。
なお、退職勧奨の際には、会社側が一方的に話すのではなく、部下・従業員の話を聞きながら進めてください。部下・従業員の話を聞きながら進めた結果、1回あたりの面談が2時間になったとしても、長時間とはいえないと考えます。
交渉が長時間となりそうな場合や膠着状態に陥った場合には、双方で検討・準備すべき事項を確認し、次回の面談を設定することもご検討ください。
4 連日にわたる退職勧奨
あと少しで合意できそうであれば、前回の面談日から近接した時期に面談日を設定することも考えられます。しかし、そうでない場合に連日にわたって面談を繰り返すことは、「連日にわたり、退職を執拗に求められた」として、違法と主張される可能性があります。
5 多数で面談に臨むこと
会社担当者が多数で面談に臨んだ場合、違法とまではいわないものの、後日、部下・従業員から「大勢に囲まれて、退職することを余儀なくされた」と主張される可能性があります。
なお、1対1の場合、「言った・言わない」の水掛け論に陥る危険があること、その他の事態に備えて、会社担当者は2名程度とするのがよいといえます。
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退職勧奨の結果、部下・従業員が退職する場合には、対象者から退職届を受領してもらってください。これを怠ると、後日、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまいます。
退職届とは
退職届とは、従業員が会社に対し、退職する旨を届け出ることです。退職届は、本人による署名捺印した書面です。これを会社へ提出することで、対象者は、会社を退職する旨の確定的な意思表示を明らかにしたと評価されます。
退職届が提出されない場合
退職届が提出されない場合、後日、退職したはずの部下・従業員から、「会社に解雇された」と訴えられる危険があります。会社としては、たとえ口頭であっても、本人が退職する旨を明らかにした以上、このような訴えは不当だと考えると思います。
しかし、このようなケースでは、会社側が「本人が退職したこと」を証明しなければなりません。そして、裁判で争われた場合には、退職届が存在しない以上、「本人が退職した」のか「会社が解雇した」のかわからないとして、「部下・従業員が退職した」という会社の言い分が認めてもらえないことになります。
実際に、退職届をもらっていなかったため、後日、本人から解雇されたと主張されてしまい、会社は訴訟で争ったものの、結果的に多額の解決金の支払いを余儀なくされたケースもあります。
このような紛争を回避するためにも、退職勧奨の結果、部下・従業員が退職する旨の意思表示を明らかにした場合には、本人から退職届を受領してください。
退職届は必ず受領すること
実際の裁判では、退職届がないケースでも、退職前後のやりとり(メールや健康保険証の返還など)から「本人が自主退職したこと」の立証を試みることになります。しかし、裁判所は書面を重視する機関であるため、このような立証が上手くいかない可能性は高いというのが現実です。
不本意な争いに巻き込まれないようにするためにも、退職勧奨の結果、部下・従業員が退職する旨の意思表示を明らかにした場合には、必ず退職届を受領してください。
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「問題社員に辞めて欲しい」、「解雇しようと思っている」など、部下・従業員の解雇・退職問題にお困りの会社は多いと思います。そこで、今回は、「退職勧奨」についてご説明します。
1 退職勧奨とは
退職勧奨は、解雇ではありません。従業員の自発的な退職を促す行為です。従業員に「自発的に辞めてもらう」ことがポイントです。そこで、「自発的に辞めてもらう」ため、どのような働きかけを行うかが重要です。
2 問題がある退職勧奨の方法
退職勧奨で問題となる例としては、次のようなものがあります。
① 解雇事由がないにもかかわらず、「辞めないと解雇する」と言う。
② 連日、長時間にわたって執拗に退職を求める。
これらは、いずれも「従業員の自発的な退職を促す行為」とはいえません。「退職の強要」であり、裁判所で争われた場合、違法と判断される可能性が非常に高いといえます。
なお、違法と判断されると、「従業員の復職(職場復帰)」が認められるのみならず、会社は従業員に対する「復帰するまでの間の賃金」や「慰謝料」の支払義務が発生します。
3 退職勧奨する場合
「退職勧奨」といっても、部下・従業員に解雇事由があるか否かによって、対応方法が異なります。
① 解雇事由がある場合
この場合の退職勧奨は、部下・従業員のキャリアや退職金の支給等を考えて、自主退職を勧めるものです。
解雇事由が存在する以上、まずは退職勧奨を行い、本人がそれに応じなければ解雇権を行使することになります。
もっとも、「解雇事由があるか」について、会社と従業員との間で争いになることがあります。この点は、退職勧奨を行う前に、従業員の問題行動に関する証拠資料を集め、弁護士や社会保険労務士などの専門家と十分に協議してください。
証拠資料(書面など)がないにもかかわらず、「解雇事由がある」と主張しても、そのような主張が裁判所に認められる可能性は低いといわざるを得ません。この場合、「解雇事由があること」を前提に退職勧奨したとしても、後日、裁判所で争われた場合には、「解雇事由がある」という前提自体が崩れる危険があるので、ご注意ください。
② 解雇事由が存在しない場合
会社は、部下・従業員が退職勧奨に応じない場合には、解雇権を行使することはできません。
この場合には、会社が求める能力と本人の能力との間にミスマッチがあることについて、エピソードを交えながら説明する、退職勧奨に応じてもらうための条件提示(退職金の上乗せ等)を検討する等が重要です。「エピソードを交えながら説明する」というのは、例えば、メールや業務指導書などの資料を示しながら、具体的に説明することです。
「絶対に退職させよう」として、退職勧奨を執拗に繰り返すと、違法な退職勧奨と主張される危険があります。この場合には、いったん退職勧奨をやめて、部下・従業員の対応が改まったかを見守る必要があります。
4 まとめ
部下・従業員の退職勧奨を行う際の注意点を述べました。実際に退職勧奨を進めるには、会社の実情や対象となる部下・従業員の問題点など、それぞれの事案ごとで検討すべき事情が異なります。また、退職勧奨の話を持ち出すと、部下・従業員との信頼関係にもヒビが入ります。
退職勧奨は、「最後の手段」です。問題行動がある社員には、安易に退職勧奨を行うのではなく、それ以前に、根気強く注意・指導を繰り返す必要があります。このような対応は、後日、退職勧奨(あるいは、解雇)の効力が争われた場合、会社側に有利な事情として考慮されます。
これらを念頭に置いて、実際に退職勧奨を進める際には、慎重にご対応ください。
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