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団体交渉は、録音した方がよいでしょうか?
Q.はじめて団体交渉に参加することになりました。後日、「言った・言わない」の水掛け論を避けるため、団体交渉のやりとりは録音した方がよいでしょうか?
A.団体交渉のやりとりは、労働組合側は録音するのが通常です。会社側も録音しておくとよいでしょう。
団体交渉は、団交事項について労使双方がお互いの意見を述べるため、途中で議論が脱線したり、解雇の有効性について協議している途中で在職中の残業代請求に議論が移ってしまう等、議論が錯綜することも多くあります。
このためメモだけでは団体交渉の経過・内容を正しく記録できない可能性があるため、団体交渉の内容を録音しておくことは有用です。また、多くの団体交渉では、労働組合は団体交渉の内容を録音しています。
後日、「言った・言わない」の紛争を回避するためにも、会社側も団体交渉を録音し、証拠保全しておくことは必要な措置といえます。
団体交渉には、社長が出席しないといけないのでしょうか?
Q.団体交渉の席上、組合側から社長を参加させろと強く要求されています。社長は団体交渉に参加しないといけないのでしょうか?
A.必ずしも社長が参加する必要はありません。
必ずしも社長が団体交渉に参加する必要はありません。もっとも、組合側から不誠実団交(誠実交渉義務違反:不当労働行為)と言われないようにするために、団体交渉に臨む際、会社側担当者は、あらかじめ決裁権限の枠をもらっておく必要はあります。
組合が指定した団体交渉の場所に応じないといけないか?
Q.団体交渉申入書には、団体交渉の場所として、当社の会議室が指定されていました。このような場所の指定に応じないといけないのでしょうか?
A.開催場所の指定に応じる必要はありません。
団体交渉申入書には、通常、団体交渉の開催場所が記載されています(例えば、「会社事務所」など)。しかし、これは、労働組合(労働者)側の要望を記載したものに過ぎません(ちなみに、「団体交渉は、会社の事務所で行わなければならない。」という法律上の規定があるわけではありません。)。
「団体交渉でやってはいけないこと」とは、団体交渉を拒否することですが、組合が求める場所での団体交渉を拒絶したとしても、合理的根拠のある対案を示していれば、団体交渉を拒否したことにはなりません。
会社において、団体交渉申入書に記載された場所での実施に支障があると判断した場合には、別の場所を提案しても問題ありません(実務では、労使双方にとって交通アクセスのよい貸会議室を利用するケースもあります。)。
労働組合が会社事務所での団体交渉の実施を要求するのに対し、会社側が会社事務所での団体交渉の実施を拒否したとします。その場合、組合側からは、「会社事務所で団体交渉を実施するのが労働者にとっても便利であり、これを拒否することは不誠実であり、違法である。」等と言われるかもしれません。
しかし、これに対しては、「会社事務所以外の場所(貸し会議室など)を指定した上で、終業後の移動時間を考えて、団体交渉の開始時刻を遅めに設定する」など、労働者側に配慮した対案を示すことが有用です。
このような対応であれば、団体交渉を不当に拒絶しているとはいえず、違法と評価されるものではないと考えられます。そして、組合としても、団体交渉によって会社と協議することが目的なので、一定の配慮がなされた対案が示されれば、団体交渉申入書に記載した開催場所に固執する可能性は低いと予想できます。
ただし、労働者の就業場所から余りに離れた場所を指定すると、「事実上、団体交渉を拒否している。」と言われてしまします。そして、この場所以外では団体交渉に応じないとすることは、違法(団体交渉拒否)と判断される可能性があります。このような対応は、「団体交渉でやってはいけないこと」です。ご注意ください。
組合が指定した団体交渉の日時に応じないといけないか?
Q.団体交渉申入書が届き、驚いて読んでみると、団体交渉の日時が1週間後と指定されていました。しかし、これでは当社の準備が到底間に合いません。労働組合が指定した日時に団体交渉に応じないといけないのでしょうか?
A.必ずしも労働組合が指定した日時に応じる必要はありません。
団体交渉申入書には、労働組合(労働者)側の言い分が記載されており、その内容を確認する必要があります。また、会社側の言い分を整理・検討するための準備も必要です。会社として、誠実に団体交渉に応じるためには、このような準備が不可欠です。
そして、そのような準備に必要な期間であれば、労働組合が開催日の延期に応じる可能性も高いと考えます(あまりに長い準備期間を主張すると、「不当な先延ばし」と言われるため、ご注意ください。)。
なお、団体交渉の準備には時間がかかるため、団体交渉申入書が届いたら、速やかに弁護士に相談する等の対応が必要です。
Q&A 従業員が退職しているにもかかわらず、団体交渉に応じないといけないでしょうか?
Q.退職したはずの従業員が加入したとのことで、合同労組から団体交渉申入書が送られてきました。その従業員は,すでに当社を退職しているので、団体交渉に応じる必要はないのではないでしょうか?
A.団体交渉として、解雇・退職の無効を争う場合、あるいは、在職時における未払賃金(残業代)の請求等に関する場合には、団体交渉に応じる必要があります。
Q&A 団体交渉の代わりに、書類のやりとりで済ませられないでしょうか?
Q.会ったことのない人たちと直接会って交渉するのではなく、書類のやりとりだけで済ませたいと思います。書類のやりとりも「交渉」なので、団体交渉に応じていることになりませんか?
A.組合側が対面による交渉を要求している場合には、これに応じる必要があります。これを拒絶することは、「団体交渉拒否」に該当すると考えられます。
Q&A 団体交渉ではなく、従業員との直接交渉で解決できないでしょうか?
Q.聞いたことのない労働組合と団体交渉するよりも、従業員個人と話し合って解決した方がよいのではないでしょうか?
A.団体交渉の申入れがあるにもかかわらず、従業員個人と直接話し合おうとすることは、不当労働行為である「団体交渉拒否」や「支配介入」に該当します。このため会社は、労働組合と団体交渉する必要があります。
Q&A 団体交渉申入書が届きましたが、応じないといけないでしょうか?
Q.従業員が労働組合(合同労組)に加入したとのことで、その組合から団体交渉申入書が送られてきました。当社に労働組合はなく、団体交渉を申し込まれた労働組合のことは全く知りません。このような労働組合からの団体交渉に応じないといけないのでしょうか?
A.合同労組であっても、労働組合法上の「労働組合」に該当する以上、団体交渉に応じる必要があります(これを拒絶すると、「団体交渉拒否」として不当労働行為となります。)。
従業員が合同労組に加入すると、その組合から会社に対し、「組合加入通知書」と「団体交渉申入書」が送付されます(組合員が会社に書面を持ってくる場合もあります。また、これらが1通の書面で届くこともあります。)。
会社は、全く知らない労働組合(合同労組)から、このような書面が届くことで、まずは驚いてしまいます。しかも、団体交渉申入書には、①労使トラブルに関する先方(従業員側)の事実認識・見解、②組合(従業員)側の要求が記載されていますが、①の記載は会社の認識とは異なる場合が多く、②の要求も一方的な内容が多いといえます。
会社としては、全く知らない労働組合から、突然、このような一方的な書面を送りつけられたことで、そもそも団体交渉に応じる必要があるのか?と疑問に思うかもしれません。しかし、合同労組が労働組合法上の「労働組合」に該当する以上、団体交渉に応じる必要があります(これを拒絶すると、「団体交渉拒否」として不当労働行為となります。)。
そこで、合同労組から団体交渉申入書が届いた場合には、団体交渉を拒絶するのではなく、先方が主張する事実経過・見解に対する会社側の事実認識・見解を整理し、組合の要求に対する会社側の回答(応じるか応じないか、対案を出すか出さないか。)を準備する等、団体交渉に向けた準備を進める必要があります。
労働組合(合同労組)から団体交渉の申入れがあった場合
問題行動を繰り返す社員(A社員)に注意指導を繰り返していたところ、ある日、Bユニオン(合同労組)から、A社員がユニオンに加入したこと、上司CがA社員にパワハラを繰り返しているため、これを是正するために団体交渉を要求してきた・・・。
このような場合、会社としては、どのように対応すればよいでしょうか。
合同労組とは
合同労組とは、労働組合の一種です。具体的には、一定地域の労働者が、所属する会社に関係なく加入することができる労働組合です。「所属する会社に関係なく」加入できるため、労使問題を抱える労働者が駆け込み加入し、それをきっかけに合同労組が会社に対し、団体交渉を要求することになります。
労働組合は、憲法28条や労働組合法に基づく組織であり、その結成や活動について、法的保護が与えられています。そして、合同労組も労働組合の一種であるため、これらの法的保護が及ぶことになります。
したがって、「知らない組合だから団体交渉など応じる必要がない。無視する。」という対応は間違いということになります。
憲法28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
労働組合法1条1項
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
労働組合の結成や活動については、法律(労働組合法)上、法的保護が与えられています。このため使用者(会社)は、労働組合の結成や活動を制約する行為が禁止されています(団体交渉の拒否など。これら禁止されている行為を「不当労働行為」といいます。労働組合法7条)。
① 不利益取扱い
② 団体交渉の拒否
③ 支配介入
団体交渉の拒否
労働組合法(7条2号)は、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」と規定しています。このため、「正当な理由」があれば団体交渉を拒否できることになりますが、実際のケースでは、「正当な理由」が認められる場合は非常に少ないといえます。したがって、団体交渉の申入れがあれば、これに応じ、交渉の席に着くのが通常です。
先ほどの、「知らない組合だから団体交渉など応じる必要がない。無視する。」という対応は、「団体交渉の拒否」に該当することになります。
団体交渉の拒否には2種類あります。「団体交渉を拒否すること」(団交拒否)と「誠実な交渉を行わないこと」(不誠実団交)です。
団交拒否
「団交拒否」とは、文字通り、団体交渉を拒否することです。
例えば、従業員ではない労働者(退職した従業員など)が加入した合同労組からの団体交渉の申入れに応じなければならないかが問題となる場合があります。
これについては、労働組合が団体交渉を要求する事項(「団交事項」といいます)に記載された内容に応じて団体交渉に応じなければならないか否かが決まります。すなわち、退職従業員からの団交申入れであっても、解雇無効等が団交事項の場合には、その団交事項との関係では「使用者」といえるため、団体交渉に応じる必要があります。
不誠実団交
「不誠実団交」とは、団体交渉には応じるものの、「話を聞くだけ」、「言い分を述べるだけで根拠資料を示さない場合」などを言います。形式的には団体交渉に応じているものの、実質的な話し合いに応じようとしない姿勢に終始することです。
それでは、組合側の要求に応じないことは、「不誠実団交」となるでしょうか?
労働組合法は、「団体交渉することを正当な理由なく拒むこと」を禁止するのみで、「組合の要求に応じなければならない」と規定しているわけではありません。
したがって、組合の要求を検討した結果、要求に応じることができない、あるいは、一部しか要求に応じられないとしても、だからといって、それが不誠実団交となるわけではありません。この場合は、会社側の言い分(提案)を理解してもらうよう、説明を尽くしていくことになります。
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労働審判期日(第1回期日)の実際【会社向け】
今回は、実際の労働審判期日について、ご説明します。
参加者
裁判所:労働審判官1名(裁判官)、労働審判員2名(使用者側・労働者側)
申立人:申立人(本人)、申立人代理人(弁護士)
相手方:会社担当者(社長・人事担当者など)、関係者(上司、同僚など)、相手方代理人(弁護士)
会社の立場で言いますと、「関係者(上司、同僚など」の参加は必須です。
関係者が参加しないと、客観的証拠がない限り、事実関係に関する会社側の主張を裁判所に認めてもらうことはできません。実務を経験すると、「客観的証拠」と言っても、「誰が見ても会社の言い分が証明される明白な証拠」というものはほとんどなく、提出した証拠(書類、メールなど)について、作成目的・作成経緯・作成前後の状況など、裁判所からの確認があると考えてください。
また、労働事件は、労使間のトラブルが数か月(場合によっては数年単位)で続いてきたケースが大半です。そして、長期にわたる事実経過の中で、「客観的証拠」(書類・メールなど)が全て揃っているケースは稀です。このため、関係者による事実関係の説明が不可欠です。
さらに、労働審判期日には、申立人(労働者)が参加して、自らの言い分を裁判所へ直接説明します。しかし、その説明の中には、会社からみると「事実とは認め難い」内容もあります。そのような場合に、キチンと反論するためには、その件に直接関与していた人物(=上司・同僚などの関係者)が労働審判期日に出席し、会社側の言い分をしっかりと裁判所へ伝える必要があります。
事実関係の確認
裁判所は、あらかじめ「労働審判申立書」と「答弁書」をよく読んだうえで期日に臨んでいます。このため、裁判所からは、双方が主張する事実関係について、申立人・相手方双方に対し、かなり突っ込んだ質問があります。
例えば、以下のような質問です。
「ここに○○と書いてありますが、具体的にはどのようなことがあったのですか?」
「甲○号証(証拠)には、『△△』と書いてありますが、これはどういう意味ですか?」
「(証拠を示しながら)どうしてこのような書類を作成したのですか?」
「(関係者に対し)先ほど、申立人が『××』と言っていましたが、そのような事実はありましたか?」
など、「答弁書に書いていないこと」や「答弁書では、はっきりしないこと」を中心に質問されると考えてください。また、提出した証拠の内容についても質問されると考えておいてください。
以上の質問は、関係者本人でないと回答できません(人事担当者は「当事者からの伝聞」が多く、しかも、細かい点まで把握できていないことから、しっかると回答できない可能性があります。)。
さらに、裁判所は、関係した当事者本人に質問し、その回答を求める傾向が強いといえます。
当事者本人であっても回答に窮する場合があり、たまに代理人が助け舟を出すこともありますが、基本的には関係者本人が回答しなければなりません。
したがって、期日当日は、関係者(上司、同僚など)の出席が不可欠です。
そして、ここでキチンと説明・回答できるか否かが結論に大きな影響を与えます。
なお、このような事実関係の質問は、申立人と相手方の双方に行われます。
事案にもよりますが、争点が多岐にわたる場合(懲戒解雇の事案で、労働者の問題行動が多い場合など)は、それぞれ1時間前後(場合によっては、それ以上)の時間がかかると思ってください。
和解に向けた協議
双方からの事実関係の聴取が終わると、和解に向けた協議が行われます。
労働審判は、調停による解決(和解)を前提とした手続であるため、このような協議の席が設けられます。
事実関係の確認は、当事者(申立人・相手方)が同席した状態で行われますが、和解に向けた協議は、申立人と相手方が別々に裁判所と話します。
和解に向けた協議の席では、裁判所から和解解決に向けた考えについて質問されます。
このため、労働審判期日に先立ち、和解する場合の条件(解決金の金額など)について、社内や弁護士との間で協議しておく必要があります。
このとき、裁判所から事案に関する裁判所の考え(心証)が開示され、裁判所が妥当と考える和解案が提示されることになります(申立人の希望が伝えられることもあります。)。これに対し、会社側として、「譲歩できるところ・できないところ」を明らかにして、譲歩できるところは「どこまで譲歩できるか」を裁判所に示します。
このような裁判所とのやりとりを申立人・相手方がそれぞれ行い、和解解決による解決の可能性を探ることとなります。
なお、労働審判の場合、第1回期日で和解できるケースも多いため(裁判所もそのようなスタンスで当事者に対応します。)、可能であれば決裁者の同席が望ましいと言えます(同席が困難である場合には、決裁者と連絡がとれる状態にしておく必要があります。)
その場で即答できない場合は、第2回期日を入れることになります(なお、第2回期日以降は、和解に向けた協議が中心です。)。
最後に
労働審判期日の実際は、以上のとおりです。
「裁判」というと、弁護士が活躍するイメージがありますが、労働審判期日の主役は当事者(申立人本人・上司や同僚などの関係者)です。
「答弁書に書いてもらったから大丈夫」と考えてはいけません。
しっかりと準備して、期日当日に臨んでください。
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