退職勧奨は、やり方によっては「パワハラ」と訴えられる可能性があります。そこで、今回は、退職勧奨が「パワハラ」と言われないようにするための注意点についてご説明します。
1 パワハラとは
まず、「パワハラ」とは何であるかを押さえる必要があります。
パワハラとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものをいいます。具体的には、「身体的な攻撃(暴行・障害)」、「精神的な攻撃(脅迫・暴言等)」、「人間関係からの引き離し(隔離・無視)」などをいいます。
このため、退職勧奨の話を切り出したとしても、それだけで「パワハラ」となるわけではありません。
2 退職勧奨で問題となる場合
もっとも、やり方によっては、退職勧奨が「パワハラ」となってしまう危険があります。パワハラと評価されうる退職勧奨としては、次のものが考えられます。
① 退職勧奨に応じるまで部屋から出さない。
② 長時間にわたって執拗に退職勧奨を繰り返す。
③ 退職勧奨の際、「あなたのような給料泥棒は、会社を辞めてもらうしかありません。」、「あなたが会社にいることは、会社にとって損失でしかありません。」など、精神的な攻撃を繰り返す。
④ 退職勧奨に応じない部下・従業員を他の従業員から隔離する。仕事を与えない。
極端な例と思うかもしれませんが、実際の現場では、つい熱が入ってしまい、やり過ぎてしまう危険があります。ご注意ください。
このような対応の結果、部下・従業員が退職したとしても、後日、「会社側の違法な言動で退職を余儀なくされた。」として訴えられてしまう可能性があります。この場合、「職場復帰」が認められるのみならず、「退職してから職場復帰するまでの賃金」、「慰謝料」の支払義務が発生してしまいます。さらに、違法な退職勧奨によって精神疾患に罹患したとして、さらなる損害賠償が請求される危険があります。
3 まとめ
退職勧奨がパワハラとなりうる場合をご説明しました。
退職勧奨を行う場合には、対象者(部下・従業員)を傷つけるような言葉(攻撃的な言葉)を発しても、対象者は態度を硬化させるだけです。
退職は、部下・従業員が自ら決断することです。「この会社での仕事は、自分に合っているのだろうか。」、「このまま会社に残ることは、自分のキャリアにとってプラスになるだろうか。」、「今の職場の人間関係に耐えられるだろうか。」など、退職を考える人は、「自分」を起点に物事を考えます。
このため、対象者の心に響く説得を行いたいのであれば、会社側の都合を述べるのではなく、まずは対象者の立場・気持ちになって説得の言葉を考えることが必要です。また、会社と対象者がミスマッチと判断したのであれば、そのような判断を裏付ける資料(客観的資料。これまでの問題行動に関する業務指導書など)を示しながら、対象者に説明することが必要です。
このような姿勢で臨むことが、退職勧奨を「パワハラ」と言わせないための一番のポイントです。
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