「公正な採用選考をめざして」の概要説明

人手不足に悩む会社

人手不足に悩む会社が増えています。人手不足を解消するため、会社は新卒採用や中途採用に注力しています。その一環として、新卒社員の初任給を大幅にアップする会社(特に、大企業)が出てきています。その一方で、社員がすぐに辞めてしまう、問題社員の対応など、労務問題に悩まされる会社も多くあります。
「よい人材を採用し、定着してもらうこと」は、これまで以上に重要な経営問題となり、採用活動の重要性は増すばかりです。
今回は、従業員の採用に関連して、厚生労働省が定める「公正な採用選考をめざして」の概要をご説明します。

「公正な採用選考をめざして」とは?

「公正な採用選考をめざして」とは、会社における従業員の採用選考に関し、厚生労働省の考え方が示されたものです。法律ではないので、これに違反したからといって、ただちに違法となるわけではありません。もっとも、「公正な採用選考をめざして」に記載された内容は、労働組合法などの個別の法律と重なる部分があるため、これらの法律に違反する可能性があります。

「公正な採用選考をめざして」の基本的な考え方とは?

「公正な採用選考をめざして」では、雇用主にも採用方針・採用基準・採否の決定など、「採用の自由」が認められるとしつつ、その一方で、「採用の自由」は、応募者の基本的人権を侵してまで認められるものではなく、労働者の採用選考に当たっては、応募者の基本的人権を尊重することが重要であるとしています。

そして、雇用主は、応募者に広く門戸を開いた上で、本人の適性と能力に基づいた基準による公正な採用選考を行うことが求められているとしており、就職差別につながるおそれがある事項として、次の14項目を挙げています。

【本人に責任のない事項の把握】
① 「本籍・出生地」に関すること
② 「家族」に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)
③ 「住宅状況」に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
④ 「生活環境・家族環境など」に関すること

【本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握】
⑤ 「宗教」に関すること
⑥ 「支持政党」に関すること
⑦ 「人生観・生活信条など」に関すること
⑧ 「尊敬する人物」に関すること
⑨ 「思想」に関すること
⑩ 「労働組合(加入状況や活動歴など)」、「学生運動などの社会活動」に関すること
⑪ 「購読新聞・雑誌・愛読書など」に関すること

【採用選考の方法】
⑫ 「身元調査など」の実施
⑬ 「本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類」の使用
⑭ 「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」の実施

最近は、勤務先に「ワークライフバランス」や「コンプライアンス」を求める人が増えているので、「公正な採用選考をめざして」に基づいて採用選考を行うことは、応募者に対し、「しっかりとした会社」であるとの印象を与え、採用活動によい結果をもたらす可能性があります。

その一方で、せっかく採用した社員がすぐに辞めてしまう、採用した社員が問題行動を起こす等の労務問題に直面する会社もあります。そこで、「公正な採用選考をめざして」を遵守しつつ、できる限り、問題のない人材・自社の社風に合った人材を採用したいと思うのが企業の本音と思います。
このようなニーズを満たすためには、「公正な採用選考をめざして」の内容を正しく理解し、同基準が何を求め、どこまでは求めていないかを見極め、それに沿った面接・選考を行うことが必要です。

従業員の募集・採用に関する法律問題でお悩みの企業様は、加藤労務法律事務所(名古屋の弁護士)へご相談ください(法律相談料は、1時間あたり33,000円(消費税を含む)です。)。
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