経歴詐称(過去の犯罪歴)による懲戒解雇

Q.採用した従業員に犯罪歴があることが判明しました。この者を懲戒解雇することはできるのでしょうか?

A.経歴詐称を理由に懲戒解雇するためには、本人が従事する業務内容や同僚となる従業員との関係で、その犯罪歴が無視できないほど重大なものであることを要すると考えられています。したがって、解雇するためには、①どのような犯罪歴であるか、②それが、会社の業務にどのような支障をもたらすものであるか、を具体的に考える必要があります。
 どのような犯罪歴であるかを全く考慮せず、「過去に犯罪歴があるから」との理由だけで懲戒解雇に踏み切ると、裁判で懲戒解雇の有効性が争われた場合、会社が敗訴する可能性(=懲戒解雇が無効と判断される可能性)があります。

就業規則の規定(経歴詐称が懲戒解雇事由となっているか?)

 経歴詐称を理由に懲戒解雇できるかを検討するにあたり、まずは、就業規則上、経歴詐称が懲戒解雇事由となっているかを確認してください。多くの会社の就業規則には、懲戒解雇事由として、「重要な経歴を偽って採用されたとき」など、経歴詐称を解雇事由とする旨の規定があると思います。
 これは、経歴を詐称して採用された人物を懲戒解雇できる内容の規定です。このような規定があれば、経歴を詐称した人物を解雇できる可能性があります(ただし、後述するように、このような規定があっても解雇できない場合もありますので、ご注意ください。)。
 以上に対し、そのような規定が存在しない場合には、経歴詐称を理由とする懲戒解雇はできないと考えられます。

犯罪歴と懲戒解雇とのバランス(社会通念上相当な処分といえるか?)

 就業規則に「経歴詐称があった場合、懲戒解雇できる」という規定がある場合、この規定に基づき、経歴詐称した人物を懲戒解雇することができるか否かを検討することとなります。
 会社の側から考えてみると、応募者に犯罪歴があるか否かは、採否を判断するにあたり、非常に重要な要素となります。例えば、窃盗・詐欺・横領といった財産犯の前科がある場合、そのような人物を金銭や商品を管理する仕事は任せられないと考えるでしょう。また、性犯罪歴がある場合、同僚(特に、異性の従業員)の中には、一緒に働きたくないと考える人も出てくるでしょう。
 したがって、犯罪歴があることは、企業が応募者を採用するか否かを判断するにあたり、重要な判断要素になるといえます。

 他方で、中途採用した人物(40~50代)が、10代であった当時に万引きで補導された過去があったとします。中途採用された後の仕事ぶりも真面目で、特段の問題も認められないにもかかわらず、面接時に過去の犯罪歴(補導歴)を説明しなかったとして懲戒解雇することは、客観的にみて、厳しすぎる処分と判断される余地があります。
 また、過去に交通事故(人身事故)を起こし、執行猶予判決を受けた人物を中途採用したとします。ほかに前科前歴がなく、また、運転手として採用した等の事情がなければ、面接時に上記犯罪歴を申告しなかったことを理由に経歴詐称があったとして懲戒解雇することは、厳しすぎると判断される可能性があります。
 以上のとおり、過去の犯罪歴につき、経歴詐称を理由に懲戒解雇するためには、本人が従事する業務内容や同僚との関係で、その犯罪歴が無視できないほど重大なものであることを要するといえます。そのような内容ではないにもかかわらず、「過去に犯罪歴があったこと」のみを理由に懲戒解雇した場合、その解雇は社会通念上相当性を欠く(すなわち、「処分が厳しく、やり過ぎである」)として、解雇無効と判断される可能性があります(解雇権の濫用。労働契約法16条)。

採用時の注意点

 仮に、採用面接の際、犯罪歴の有無を確認していなかった場合、応募者(=採用された人物)は、過去の犯罪歴を質問されなかったため申告しなかったに過ぎないことになります。この場合、後日、犯罪歴が明らかになったとしても、会社は、「従業員が犯罪歴について経歴詐称した。」と主張することができなくなる可能性があります。したがって、採用時には、過去の賞罰(犯罪歴を含む)について、確認することが必要です。
 職歴に空白期間がある場合には、空白期間となっている理由や空白期間直前の会社を退職した理由を質問する必要があります。ここでの回答が曖昧であったり、おかしな内容であったりした場合には、何らかの問題が存在する可能性があります。これらについて質問することは、問題を抱える応募者をスクリーニングする効果があり、採用後のトラブルを回避する一助となります。また、採用面接におけるやりとりは、後日、経歴詐称が判明した場合、懲戒解雇の有効性を補強する事情として活用できる可能性があります。

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